夜は短し歩けよ乙女

「夜は短し歩けよ乙女」森見登美彦 角川書店

 本日読了。

 4つの短編ストーリーが収められた、ラブストーリーとか言うとむずむずするので訂正――この物語は、主役になろうとあがく「私」と、知らず知らずに主役になってる私が恋する「彼女」のお話。

 後輩の黒髪の乙女に恋した「私」は、なんとか自分の存在を認識してもらおうと(まず認識から始まるのが哀れ)彼女を追いかけ続ける。しかし、彼女は行く先々で、彼女が言うオモチロイ出来事にかかわるので、最後は大勢の人物が渦巻く事件になってる。そして「私」はいつもいつもその脇役に甘んじてしまい、たいして彼女の眼中に残ることはないのだった。はたして「私」に栄光のキャンパスライフは訪れるのか。

 デビュー作「太陽の塔」では『彼女と終わってしまった恋』に一生懸命虚勢を張る男を追うストーリーでしたが、こちらは『彼女と始めるための物語』なので明るい気分で読めました。

 本を掴もうと偶然手が触れ合ってお近づきに計画、とか偶然大学や町で出会って運命を感じてもらおう、もしくはこちらの意図に気づいてもらおう計画! など外堀を埋める非常にまどろっこしいやり方しかできない「私」、おまけに彼女はそんな意図にちっとも気付いてくれない。いくら彼女のために頑張ってみても報われない「私」ですが、物語が進むごとに、存在を認識してもらい、名前を覚えてもらい、いつも会う顔――いつも会わないと違和感を覚える、と、少しずつ彼女の目に映るようになってきて、最後は――御本でお確かめください。

 役者の世界も一発目から主役を張る人もいれば、脇役から積み重ねて主役になれる人もいるんですよね。

 私は一話「夜は短し歩けよ乙女」と三話「ご都合主義者かく語りき」が特に好きです。群集劇は大好きなので。特に三話は「私」が、最後すごい頑張ったよ。
 二話「深海魚たち」は、偶然下鴨涼納古本まつりについて、本で読んでたのでイメージしやすかった。この話は三話もですが、ちょっとしたミステリーになってますね。招き猫と達磨の使い方はお上手でした。
 
 この本の面白いところは私の一人称と彼女の一人称を交互に繰り返すことです。
「彼女」のあとを追いかけると、彼女が見たものが全然違う感想で「私」から出てくる。
でも逆に追いかけてるわけではないのに「私」が見たものを「彼女」が見る時もある。
この不思議な錯綜。地球は丸い。「夜は短し歩けよ乙女」(夜の先斗町)「深海魚たち」(下鴨涼納古本まつり)「ご都合主義者かく語りき」(大学学園祭)「魔風邪恋風邪」(風邪に沈む京都)限られた空間を「彼女」(そしてそれを追う私)は歩いて行くから、あの少年の言うとおりすべてが一つにつながっていく。
 
 また2人の知っている、見たことを掛け合わせて初めて浮かび上がる真相もある。ラストシーンの2人の独白は、まさにこの本の完成を示唆している。自分が見た世界を知ってもらおう、そしてあの人がどんな世界を見たのか知りたい。世界と世界が出会ってそうして共有されるのですね。
 うーむ。いささかご都合主義でも、この話はハッピーエンドしかないではありませんか。

 あー面白かったです。この人は俗で内輪なアイテムや文化を挿入するのが独特でお上手ですよね。
「偽電気ブラン」「詭弁踊り」「偏屈王」「閨房調査団」「ジュンパイロ」エトセトラ。李白さんの三階建て電車が魅力的。闇夜の町を動く奇妙な電車は妖怪じみてて、わくわくするなぁ。

 あと七色の吹き流しって何だろうと思ったら、吹き流しって旗の一種なんですね。つまりあれは某あの人の風邪の予兆を暗示していたのでしょうね。二話からこの描写がされるようになるので。

 キャラクターを言うと、樋口さんが存在感あり過ぎてもー。事務局長も好きです。女装見たいです。
あと遠距離恋愛の彼女どんな人かなぁ。
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genre : 本・雑誌

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