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蒼穹のファフナーSS「第一回『楽園』食事マナー議論」(子供キャラALL)

※パラレル設定で、いないはずの人が何故かいる映画後子供オールキャラ小説。
操は可愛い!&一騎さんはこんなタイプの人だろうなぁというのが主旨。
なんか気づいたら真矢が総士いじめていたんだぜ。ほのぼの食事マナーコメディ。





どろりとした濃い茶色い液体が広がるのを、彼は目を丸くして見つめていた。

かしゃんっ!

手に持ったスプーンが音を立てて床を転がっていく。
その音に気付き、正面に座っていた人物に目を向けて、皆城総士はぎょっとした。
スプーンを落としたことにも気付かない様子で、固まったままこちらを見つめる来主操は、雨に濡れた仔犬のように頼りない顔で泣き出しそうな目をしていたのだ。

「……どうした?」

恐る恐る聞いてみた。

「ひどい」

ぽつりと零れた言葉と共に、みるみる浮かび上がってくる涙に、またまたぎょっとしてしまう。
そんな二人の異変に気づいてか、良く知るキッチンの一人と、ウェイトレスの一人がこちらを注視し出した。

「総士はひどいッ! 上から勝手に変なものかけて、カレーが嫌いなの? 一騎が嫌いなの?」

総士はちらっとたった今、自らの手でカレーに降り注いだ液体――ウスターソースを眺めてから、内心「はぁ?」と言いたいのをこらえてごく淡々と説明した。

「これは調味料で、勝手にかけて良いもの――」
「皆城くんひどい!」
「はぁ?」

今度こそ本当に声を出してしまった。
いつの間にか近寄っていたウェイトレス、遠見真矢が操の隣におぼんを片手に仁王立ちして厳しい同意の声を上げた。

「一口も食べないで調味料漬けなんて、元の味なんか分かんないよ。ちゃんとそのままの味で食べないと、作った人に失礼だよ!」

ぷんぷん怒っている真矢と泣きそうな操。
困った。非常に困った。

「ぐすん。総士がカレーも一騎も嫌いなんて悲しい」
「皆城くん、結婚できないよ」

自分はそこまで非難されなくちゃいけないことをしてしまったのだろうか。
助けを求めるように、この料理の作り手、ある意味この問題の当人に視線を向けると総士以上に困惑している真壁一騎がキッチンにいた。

「いや、俺好きに食べてもらって良いんだけど……」

呟いたが、自分たちの世界でエキサイトしている二人にはまったく耳に届いていなかった。


※※※


「えぇ~っ。私なら、遠見先輩の作った料理なら、どんなに不味くても食べますよ!」
「遠見、先輩の料理、絶対……残さないで食べる……!」

手を振り回しながら大声で主張した西尾里奈と特攻でもしかけるのじゃないかと思うほど勢い込んで言う西尾暉の双子ペアは、真矢の顔が引きつっている事実には気付いていないようだった。

「味ごまかさなきゃ食べられないもの作る本人の努力が足りないってのもあると思うよ。まぁ、あたしは出されたものは好きにすれば良いと思うけど」
「あのさぁ、みんな、私の料理の話じゃないよ。ここの料理は一騎くんが作ってるんだよ」
「あっそうか。要先輩ったら、真壁先輩の料理が不味い訳ないじゃないですか、遠見先輩と違って!」

彼女は本当に真矢の事を敬愛しているのだろうか。
現在喫茶店『楽園』には、奇しくもパイロットメンバーが全員勢ぞろいしていた。
偶発的状況だったがこれ幸いに、真矢は「出された料理に調味料を豪快に入れる行為をどう思うか」を聞いているのだが――

「あのよー。俺、咲良の料理食ったことないんだけど」
「えっそ、そうだった? 前にパイロット合宿とかであたし作ってたけど……」
「それって俺だけにじゃないじゃんか」
「ば、馬鹿ッ! 食べたいなら作ってあげてもいいけど」
「先輩たち、いちゃつくなら店の外でお願いします」

青春真っ盛りの二人を、里奈がじっとりした目で突っ込んだ。

「私は料理を作ってあげたり、作って貰ったりするよりも一緒に作りたいかな」

そう嬉しそうに言う芹は、乙姫を思い出しているのだろう。

「好きな人に食べてもらう料理の話でもないんだけど……」

話が脱線しまくって上手く議論になっていなかった。
ここで汚名返上とばかりに里奈が話を元に戻してくれる。

「そうですね。作った料理に味の濃い調味料をがんがん入れられるのは、許せないですよね!」

ほら見ろ! と言わんばかりに真矢は総士を流し見た。総士は居心地悪そうに身を固めたままである。

「分からない感覚だな」

ぽつりと零したのは一騎ケーキを黙々と食べていたカノンである。
広登や剣司といった男性陣は、概ねそのような感覚らしく、カノンの意見に相槌を打っている。

そんな彼女に「んー」と言いながらじりじりと近づいた咲良は、こっそりカノンの耳元でこう囁いた。

「もしも一騎にあんたが作った料理食べてもらうなら、あんたが味付してない濃~い調味料入りと、そのままのあんたの料理とどっちを食べてもらいたいと思う?」
「なっ」

周りでは何を言ったのか聞こえなかったのだが、その言葉はカノンを熟考させるものだったらしい。しばし黙り込み、フォークを握りしめて、

「調味料過多は良くないな。体に悪い! よってそのような行為は断じて許せん!」

と鋭い声を上げた。他の人は「この人相変わらずだなぁ」と思ったが、咲良だけは言ってる事と全然違う理由で意見を撤回したと知っているので密かに「可愛いなぁ」と思いながら笑っていた。

段々と真矢優先の状況になってきたので、一見涼しげな顔をしているように見えるが総士の内心は汗ダラダラである。
そんな時に、ずっとみんなが座るテーブルの前で黙り込んで突っ立っていた一騎が、何か納得したかのように一度頷いて、すっと手を伸ばした。
触れた先は、置くタイミングを忘れてずっと総士が握っていたウスターソースの瓶である。

「一騎?」

総士の疑問符に全員が一騎の方を見た。
一騎はウスターソースを受け取ってからキッチンに行きカレー鍋の蓋を空けると――

「え?」
「一騎くん!?」

何人かが驚いた声を上げてしまった。
それというのも一騎は、カレー鍋の中にどぼどぼとウスターソースを入れたからである。

「あんた何やってんのよ」

呆気にとられた皆を代表して咲良が聞いた。それに一騎は手早く火を起こしながらあっさりと答える。

「このカレー、商売用で食べやすいように甘口設定しているからさ。総士が甘いの嫌いだったのもあるかなぁって。ウスターソースは色んな食材煮込んで出来ているし、手っ取り早く深みのある味にするには便利な調味料だし」

ぐつぐつ煮込まれていくウスターソース入りのカレーにおたまを差し入れ、小皿に中身を載せてから口をつけた。
うん。と満足そうに頷いてから一騎は人数分の小皿にカレーをよそい、彼らに差し出す。

全員が一時動きを止めて、じっと小皿のカレーを見つめていたが、思い切って手を出してみた。

「……うまいな。普通にソースをかけたよりもうまいかもしれない」

少し驚いたように言う総士に「煮込むと味変わるから」と一騎は答えてみんなの様子を窺う。

「へー。カレーにウスターソースを入れるとこうなるんだ」
「ウスターソースなんて揚げ物にかけるだけだと思ってたぜ」
「いつものカレーと違うけど、これはこれでコクがあって美味しいですね」

評判は悪くないようだ。
思いっきり総士を非難してしまった真矢は複雑そうな顔をしている。

「遠見は、うまくないのか?」
「そんなことないよ!」

と慌てて言って、総士に目線だけで「あんなに責めることじゃなかったね。ごめん」と伝えておいた。
やたら睨まれていた総士はそれでやっとほっと出来たのである。

「じゃあこれは皆城くんのカレーだね」

そう言って真矢は一騎に笑いかけた。彼女の瞳の奥のきらめきからは、一騎の意図を完全に理解したことを知らせていたので、一騎も軽く笑い返すのだった。
他の人たちは通じ合っている二人から置いてきぼりのまま、どういうことかと目線で問うと、再び一騎はキッチンに舞い戻ってしまう。

「食べたい味とか、入れて欲しい具材があるなら、みんなが言ってくれれば俺は作るよ」

調理道具を並べながら何ということもないのだと言わんばかりにそう告げる。
その言葉が次第に脳に到達し、自分アレンジのオリジナルカレーを作ってくれるのだと一騎が言ったと気づき、子供のように(いや、まだみんな子供だが)目を輝かせた。

「はい! はい! 俺チーズカレー好きで、前々からチーズあったらなーって思ってて!!」

興奮するみんなの様子を見渡し。

「あーあ。私はまだまだ料理のプロにはなれそうもないなー」

いつもの甘い声で、女の子としては辛い自己評価を真矢は零すのだった。

これ以降、喫茶『楽園』には、パイロット+α限定の裏メニューに総士カレーやら真矢カレーやらが出来たらしい。
ところで総士を最初に責めてからずっと静かだった操はどうしていたかというと――。

「ずっと奥でプリンを食べていたのか?」

総士は些か呆れて言った。

「だって一騎プリンってすっごく美味しいんだもん」

軽く5、6個平らげてしまったらしい。食べすぎである。

「来主くんは、何かカレーに入れてもらいたいものはないの?」

後から来たみんなが帰ったので、片付けをしていた真矢は聞いてみた。一応、奥で操は事のあらましは聞いていたらしい。

「えっ?」

きょとんと首を傾げてから、徐に席を立ち、トコトコと歩いて皿洗いしていた一騎の服を軽く引っ張った。

「あのね。俺は一騎カレーが良いな。だって生まれて初めて食べた、生まれて初めて美味しいって思った料理だから!」

それを聞いた3人は、ちょっぴり和んだとか何とか。
代わりに操が一騎カレーを頼んだ時は、サービスで一騎プリンがついてくるようになって、大喜びだったらしい。

―完―

一騎の名前のメニューはきっとムックに書いてあったみんなの居場所を作ろう計画の一環なんだろうなぁ。
でも映画後なら一騎はもう大丈夫だから戦うみんなのメニューを作ってあげたくなって出来た話。
集団の中だと一騎は出しゃばらない子だから、ちょっと動かすの難しかったぜ。
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theme : 二次創作:小説
genre : 小説・文学

Re: タイトルなし

> たまごごはん様

はじめまして。
感想ありがとうございます! リアルタイムの映画上映の時に書いたので、
自分でも久しぶりに読み返してしまいました。みんな今とはキャラ違うなぁ~。
ファフナーは日常描写が希少価値なアニメなので、
こちらの小説でほのぼのしていただいたら幸いです。

めっちゃほっこりしました!素敵なSSですね。
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プロフィール

Author:hawa
二次元小説は男女(女男)CPかnotCPの健全ものです。
無断転載禁止。版権元、原作者とは一切関係がありません。
感想、コメントは歓迎。お返事します。※ただしお返事はあまりはやくないこともありますのでご了承ください。

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