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蒼穹のファフナーSS「抱きしめきれない貴女へ」(芹+総士+一騎)

※芹ちゃんから乙姫ちゃんへの想いをちょっと考えてみた。
あとムック小説で一騎とのやりとりが微笑ましかったので、あの流れで総士とも絡ませてみた。
「Newtype Library 冲方丁」の小説既読推奨。映画後話。



海の中にいた。
真っ青な海の中に立ち尽くしていると、クラゲや魚の大群が私の横をすり抜けていく。
私はこれを知っている。メディテーションで知った、私の海(ボーダーライン)だ。

彼女がいた。
海の中に、彼女がいた。
小さな体と長い黒髪の少女。
大切な大切な友達。

反射的に手を伸ばすと、彼女は何故か遠ざかっていく。
手を広げ、その手は私に向いているのに、体はふんわりと深淵の彼方へと遠くなっていく。

――どうして!?

彼女は微笑みながら手の届かない場所に行こうとする。
私は必死で走り寄ろうとするのに、上手く進むことが出来ない。
もどかしい。悔しい。
手を伸ばしても届かない。


そこでいつも、目が覚める。


「また、この夢……」


最近、同じ夢ばかり見る。
海の夢。私と彼女の夢。

それが頭から離れなくて、里奈からは「この頃なんか変だよ?」と心配されてしまっている。
だってしょうがないじゃん。
夢の内容が楽しいものなら、こんなに悩まない。
でも私が見る夢は、悲しい夢なのだ。

嫌がっている訳でもないのに、あの娘と私は引き離されて、決して手は届かないのだから。

今日もまた、ほら!

海だ。
私の海。そして彼女がいる海。

いつものように、海の中にいた私は、彼女と向かい合う。
距離は四歩ほど開いている。歩き出せば、彼女はふんわり浮かんでは水面に出て、そのまま遠くなる。
手は広げ、受け入れるように。黒い髪を靡かせて、遠くなっていく。

今日こそは頑張ろう。
進むんだ私の足! 手を精一杯伸ばして。お願いだから、届いてよ!

そしてようやく指先が触れそうになって「やった」と思う間もなく、私は転んでしまった。

――嘘!?

ぶくぶくと泡が立つ。
口から、足元から。

苦しくはなかった。


沈んでしまう。

視界が反転する。

意識が瞬きするように断絶されては甦る。

何故か私は、この前もコケそうになった事を思い出していた。

その時は助けてもらった。

一騎先輩に。

写真のスライドでも見ているみたい。
ぶつ切りの景色がチカチカと映りこむ。

海。
空。
人。

あれ? 本当に一騎先輩が見えたような――

廻る世界。

あれれ? 今度は総士先輩が見えたよね――

けど、あれもこれも刹那のひと時。

そして乙姫ちゃん。
乙姫ちゃんが私の顔を覗き込んで、微笑んでいる。

――ねぇ。私はどうして貴女に届かないの?

『それはね』

――それは?


そして答えを聞く前に、目が覚めた。


「何だっちゅーの、これ……」

毛布に顔を突っ伏して、うなだれてしまう。
いざ食べようとしたおやつのドーナツでも取り上げられた気分だった。

「なんで乙姫ちゃんに届かないのかなぁ」

手の平を空に向かって伸ばしながら、独りでに愚痴ってみた。
今日は学校が休みなので、いつものように山に行こうとしたが予定を変更することにした。
夢のことが何か分かるかもしれないと思い、本物の海に行くことにしたのだ。

とぼとぼと歩いて、海岸線が見えて来ると同時に、先客の姿も見えて来る。
誰だろうと思ったら、何の偶然だろうか。

「何しているんですか、一騎先輩、総士先輩!」

足早に駆け寄ると、二人とも何だか困ったような顔をして砂浜に佇んでいた。

「ちょっと……」

答えた一騎先輩の歯切れが悪いのは何故だろうか。

「立上はどうしてここに?」
「それは乙姫ちゃんの……」

と言いかけて口を閉ざした。夢の話は誰にもしていない、でも――。
ちらっと見上げると、乙姫ちゃんの名前を聞いて、総士先輩の目が強くこちらを向いていた。

今日の夢の中には、一瞬だったけど二人が出てきた。
何か私の知らないことを、この人たちは知っているかもしれない。

「夢を見たんです。あの、海の夢」
「海というのは、もしかして君のボーダーラインである心象ビジョンのことか?」
「そうです!」

総士先輩、あんだけで良く分かるなぁと感心すると、横から一騎先輩が、

「ボーダーラインの夢を見るのは、瞑想訓練を受けたパイロットなら普通のことだと思うけど。俺もたまに見るし」

と言ってきて納得した。

「でもなんかちょっと変わっていて、乙姫ちゃんが出てくるんです」

そう言ったとたん、二人は顔を見合わせた。

「本物?」

「どうだろう。乙姫はもういないはずだ。新しいコアとして生まれた彼女もまだ特定の個人にクロッシングする程、自我が発達しているとは思えない」

「それと、先輩たち二人も見かけような」

またまた不思議そうに顔を見合わせてしまった。

「その夢を見るのは、一度だけか?」
「何度も見ました。でも先輩たちを見たかもしれないのは、今日だけです」
「ならば、ただの夢とも断言できないか……」

試しに聞いてみただけなのに、二人を深く考え込ませてしまったようだ。

「あっ、分かんないなら良いです。別に害はないし。ただの夢ですよ」

そうなのだ。ただ乙姫ちゃんが言おうとした言葉が分からないだけ。それだけ。
でも分からないまま忘れてしまうと考えると、胸のどこかがぎゅっと痛むような気がした。

そんな時にぽつりと一騎先輩がこんなことを言い出した。

「でも、俺も君の海を、夢の中で見たことがあるかも知れない」

意外なことを言われた。

「魚の大群が押し寄せてくるような海だろう?」と続けて言われて、うんうん頷いて、はて疑問の芽が生まれた。
「あれ? 先輩って私の海の内容を知っていましたっけ?」

ついこの間まで、身体の問題があったから、一騎先輩とは瞑想訓練をしていないはずである。
そう指摘すると難しい顔をされた。

「資料で見て知っているけど、それを見る前に夢で見たから」

良く分からないのだろう。
でも私の夢に一騎先輩が出てきて、一騎先輩の夢にも私の海が出たのだから、何か関係があるのかもしれない。

「何か私の海を見て思ったこととかありませんでしたか」

真剣に訴えると相手はさらりと答えてくれた。

「そうだ。最初、君の海を見たとき、皆城乙姫だと思ったんだ」

発する音を私は食い入るように聞いていた。
一騎先輩はそこで一旦止めて、何故か続けて良いものかどうか悩んでいたようだったが、私は目だけでねじ伏せてその先を口にさせる。

「――でも、皆城乙姫にしては狭いなって思った」

その言葉を聞いたとき、ぱっと頭の中の霧が晴れた気がした。

「分かった!」

両手を広げていた乙姫ちゃん。
広い広い海を持つ乙姫ちゃん。
決して拒絶していないのに届かなかった乙姫ちゃん。

「そういうことだよね」

そして私は何に気付いたのか良く理解出来ないでいる二人に、抱きついてみた。

「なっ」
「えっ」

突然抱きついた私に二人が慌てているのも意識に入らず、私は別のことを考えていた。

――ああ、私じゃあ、たった二人を抱きしめるだけでも腕が回らないや。

乙姫ちゃんは言っていた。
島のミールと一体化する時に「お母さんみたいにこの島のみんなを抱きしめる」って。

あの夢の中で、乙姫ちゃんはこちらを優しく見つめながら、私が届かない理由を言おうとしていた。
何を言おうとしていたのか、今なら分かるよ。
この島のみんなを抱きしめている乙姫ちゃんに、遠く及ばないちっぽけな私が乙姫ちゃんに届くわけがないもんね。

「総士先輩、乙姫ちゃんって凄い可愛いですよねッ」

ぱくぱくと口を動かして何も言葉になっていなかった相手に、ずいっと顔を近づけると、完全に狼狽えきった表情が飛び込んできた。

「は?」
「可愛いですよね!」

もはや“YES”の返事しか許さない追及だったけど「あ、あぁ」と勢いだろうが何だろうが同意をもぎ取った。

「乙姫ちゃんはとっても素敵な大人の女性になって、とっても良いお母さんになっただろうなぁ」

言いながら顔を伏せた。それを聞いた誰かさんがどういう顔をしているか見ないように。

「だから、私は絶対に良い女になって、素敵な旦那さんを貰うんです。子どもとか生まれたらうんっと抱きしめてあげるんです」

それぐらいになったら、私は乙姫ちゃんに届くかな?
みんなを抱きしめる乙姫ちゃんのことを、今度こそ私が抱きしめてあげられるかな。

私も抱きしめてあげたい。

しばらく無言だったのは、二人とも気を遣ってくれたのか、かける言葉がなかったからか。

「もう夢のことは解決したのか」
「はい。二人ともありがとうございました」
「そっか。良かった」

先輩たちは腑に落ちないだろうけど、これは私の問題なので、深く追求してこないことにも感謝する。

「あの」
「はい」
「その」
「?」

最初は総士先輩で、次は一騎先輩にあのその言われたけど、何が言いたいのだろう。
それでようやく思い切ったように顔を逸らしつつも二人から出てきた言葉が。

「離れて欲しい……」
「あっ」

私、まだ抱きついたままだった。

「で、二人とも何やってたんですか?」

ようやく二人から離れて――ちなみにその時、二人とも心底救われたような顔をしていたのには若干怒りが湧いたが――最初の疑問を再び聞いてみた。
この人たちは何か用事があって海にいたのではないのだろうか。今度は一騎先輩もちゃんと答えてくれた。

「遠見を持っていたんだけど、来ないんだよ」
「約束の時間は君が来るより前だったはずなのだが」

なるほど、それで困りつつ立ち往生していたらしい。

「だったら迎えに行ってあげれば良いじゃないですか」

後ろに回り込んで、二人の背中をぐいぐい押してみる。

「えぇっ?」
「待て。自宅にいるとは限らないだろう。何か途中で不測の事態が……」
「てきとーにそれっぽい所、探しましょうよ!」
「適当にって、どこ?」
「見当もつかない」
「役立たずじゃないですか!」

びしりと言うと、二人とも結構ショックを受けていた。両方とも真面目なタイプだから、あんまり言われたことがないのだろう。

「もーう、先輩たち二人だけじゃ頼りないんですから。私が何とかしてあげます!」

今度は二人の手を引いて、遠見先輩を探しに行くことにする。まぁ、私も見当はつかないけど。大丈夫。大丈夫。たぶん。

乙姫ちゃん、私頑張って素敵な素敵な大人の女性になるよ。
その為の第一歩として、まずは島(乙姫ちゃん)を守ってくれた、この二人のお手伝いからしようか。
もしかしたら、今日の私の夢に二人がいたのは、乙姫ちゃんもこの人たちのことが心配だったからかも。

「そうだ。素敵な旦那さんの方はどうしようかな。同級生とか問題外だし、先輩達とかもう全然ダメだし」

にこにこして言ったら、両隣の二人に軽くため息をつかれた。失礼だ。本当に、この人たちはダメダメだと思うよ、乙姫ちゃん。


―完―

なんか、この芹ちゃんは二人に対して実は満更でもなさそうだ(笑)
余談だが「胸が……当たってる……」って心中を入れたかったけど、芹ちゃん視点のせいで無理だった。
芹ちゃん視点なので、他にも色々勘違いしていたりするんだが、やっぱり入らない。
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theme : 二次創作:小説
genre : 小説・文学

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