スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

コードギアスR2SS「朝と夕べの物語」(主要キャラSS連作)

一期と二期の間の話。1、或る偽りの兄弟の話(ロロ+ルル)2、或る魔女と戦士の話(カレン+C.C)3、或る信仰のない騎士たちの話(アーニャ+ジノ)4、或る偽りの夢見る者たちの話(スザク+ナナリー)※notCPのつもりでしたが、見る人が見ればシールル←カレでジノアニャでスザ→ナナっぽい。2008年5月ごろ書いたのでまだR2放映途中で執筆したものです。



 神様は世界を完璧に作りませんでした。
理由はたくさんありましたが、第一に神様自身が完璧ではなかったのです。
そして第二に、世界が完璧だとすぐに壊れてしまうからです。

世界は完璧ではない故に、こうして存在することができます。


世界は今、嬉しく思っています。


「朝と夕べの物語」(1、或る偽りの兄弟の話)

光は死んで生き返った。
空の藍紫は、淡々としている。

昨夜(ゆうべ)殺した光が、目覚めようとしている。

それらは咲く寸前の蕾のように恥らって、慎ましやかにほんのり輝く。

少年は光を受け入れた。
しばらくすると、本物の朝が来るだろう。

寝ぼけたようなこの光が、雄雄しく、逞しく、地上を照らすのだ。
しかし今のところは可憐な乙女のように、か弱い明かりしか発していない。

朝と昨夜の淡い。

だから、

「ナナリー」

そう聞こえたときも、別段おののきはしなかった。
茫とした目でこちらを見る兄の瞳はまだ強烈な昼の理性の光は宿っていない。
そこにあるのは、朝と昨夜の間に彷徨う夢のような光だけ。

その光はすぐに殺されてしまうんだ。もっともっと強烈な光によって。

「ナナリー」

同じ言葉を繰り返す、狂おしいほどのその求め。
それはどこから生まれてくるんだろう。

家族なんて、きょうだいなんて、ただ同じ血を分けただけ。それだけ。それだけの存在に殉じようとする人は確かにたくさんいた。
不思議だったが、自分とは関係がなかった。

でもこの人の弟になってみて、自分と関係があるようになると、以前よりずっとずっと不思議になった。

彼の妹はこんな風に扱われて、愛されて、必要とされて、同じ時間を共有して、まるでひとつのように生きてきてたのだと思い馳せると、ひどく困惑して、そして恐ろしくなる。

それは本来居るべき人の場所を奪っている事へのひしひしと圧迫してくる罪悪感なのか、それとも彼の優しさに何か裏でもあるのかと思ってしまうからなのか、それとも役に入り込みすぎていつしかこの日常に溺れそうな恐怖が(馬鹿馬鹿しいと思いつつも)あるからなのか。あるいは、けして彼と彼女のような関係になりきれる訳は無いという、敗北感と諦観と疎外感なのか。

そのどれでもあるし、もしかしたらどれも違うような気がする。


ともかく、自分は怖いのだ。


ハッと目覚めた彼は、


「あぁ、今何か変なことを……言ったような」

と自分に向けてか、僕に向けてかぽつりと問いかけた。
そうだ。彼の妹はよくよく考えると僕と同じような髪色と髪質をしていたなぁと思った。

「兄さんまだ寝ぼけているんだよ。まだ朝日が昇ったばかりだからもっと寝ててもいいのに」

「そうか。だがお前こそもっと寝てていいんだよ」

「うん。でも今日は早く起きたい気分だったんだ」

「なら朝ご飯はロロのリクエストに応えるよ。考えておいてくれ」

「えっ。うん」

背を向けて歩みだす彼を、僕は光の中で見送ろうとした。
ドアの前で歩みを止めた彼は僕を振り返り、

「それと、言い忘れていた。おはようロロ」

それは弟に対する慈愛に満ちた微笑み。今日という日が楽しく健やかであるように込められた祈り。
僕が本来なら一生向けられることのなかったはずのもの。
この光のように、日々を連ねるごとに知らず知らずに自己を殺されている偽りの兄へ、

「おはよう兄さん」

(そしておやすみなさい、ルルーシュ。あの悪魔の目を持つ男よ、永遠に。それが僕の任務で唯一の生きる術なのだから)

光はこうして殺された。

「朝と夕べの物語」(2、或る魔女と戦士の話)

人間の全ての罪を背負うために、救世主は生まれてきたのだとしたら、人は罪を犯さずにして彼の救済を施されることはない。
救世主は人の腹から生まれ、人は罪を犯した咎によってそのような体になったのだから。
しかし罪がないなら救世主はそもそも必要ではないのだろう。

本当にそうだろうか。
彼が起こした奇跡の数々を、あの姿を、あの存在を、無かったものとしていいのだろうか。

それは救済の求めではなく、ましてや罪を肩代わりさせたい訳ではなく、もっと純粋で単純な彼に対する愛だったのかもしれない。


神々がざわめいていた。

侵入者がいるぞ。

その侵入者は見目麗しい姿をした可憐な少女2人だった。

森は生命の温床だ。
海のように混ざり合ってどろどろと溶け合ってはいないが、ひとつところでまとまっている。
その空間で、命は舞い上がり、通り過ぎ、狭いからにはぶつかってくる。

だから剥き身の肌は敏感だ。
ナニカに反応している。

カレンは森に入ってすぐに気づいた。
ここにはいるのだ。たくさんの生命がいる。

これだけ密集していれば、歩いただけで自分はその生命を一つなりとも殺してしまうかもしれない。

不安が襲う。

そんな少女を知らぬ気に、もう一人の少女は堂々と歩いていく。
不安なんてこれっぽちもなさそうだ。

そうだ。不安なんてなさそうだった。
ゼロが――ルルーシュがスザクに捕らえられたと聞かされたときも、記憶を(そんな馬鹿なとは思ったが確かに事実だった)書き換えられて自分たちのことをまったく忘れてしまったと聞かされたときも。

この女は眉一つ動かさず「そうか」と淡々と頷くだけだった。
仮にもゼロの愛人とまで噂されたぐらいにその近くにいて、私よりもずっとずっとその心情も行動も把握していたのだろうに。

心配ではないのか。
でも、彼を置いてきてしまった自分が、そのように問い詰めることなど出来る筈がなかった。

そうして、ここにいる。私たちだけ。

「懐かしいな」

「何が?」

「この雰囲気がだ。あの坊やたちもこんな場所で遊んでいたな」

意味が良くわからなかったが、これまでの彼女の言動から顧みるに、あの坊やとはルルーシュの事だろう。

「あなたたち、そんなに昔から一緒にいるのね」

「そんなことはない。むしろ一緒にいる時間のほうが短いぞ。私は忙しいからな、いつもあれの面倒を見てはいられない」

聞きたかった答えとはなんだかずれている。おまけに面倒を見られてるのはこの女のほうだろう。

「そう。だったら一年ぐらい一緒にいなくても全然平気なのも頷けるわ」

呆れて返り、軽い愚痴の中につい探りを入れてしまう。

「ふっ。いいんだよ。だって私とあいつは繋がっている。どんなに離れてもどんなに忘却しようとも死ぬまで途切れることはない。生きている限り、ずっとずっと、そういう契約だからな」

さらりと口にするその繋がりが羨ましい。
だってカレンは、この愚かで盲目的だった小さな少女は、慕っていたゼロの本当の気持ちも知らなかったし、腹の立つ同級生だったルルーシュの気持ちもきっと知らない。

知らなかったから、しょうがないで道理が立つわけがない。

例えば、一番最初に疑った時にもう少し彼の事に興味を持っても良かったのではないだろうか。(しかしシャリーに勘違いされて面倒になるのは目に見えていたが)

カレンの罪は、知らないままでいいと思っていたこと。
そのせいで、カレンは選べなかったのだ。

自分はゼロじゃないとただの凡人のふりをして騙されていたって、悪意があったとは限らない(カレンだって悪意ででなくしかたなく病弱のふりをしている)、ゼロがブリタニア人かも知れないのだって承知していた。
あたし達を騙していたとか言ったけど、口でなら何とでも言える。

じゃあ何が問題なのかというと、どうしてブリタニア人でただの学生にしか過ぎないルルーシュ・ランペルージが日本を独立させブリタニアを壊そうとするのかの目的がわからない。
ゼロという正体不明で何のバックボーンも疑えない人物だったら、その不鮮明さに目がくらんで、それほどその目的に疑問を抱かないでいた。

でも今、示されてしまった。しかもそれなりに自分と交友があって<日常の中>にいた人物をだ。

彼の目的がカレンの主義に反するものかどうか皆目検討がつかない限り、カレンは彼と手を切るべきか協力すべきかどちらも選べない。

そしてあの時、カレンは逃げてしまった。
今もまた彼女のように、彼とそれ程近くない自分は選べないでいる。

手を取るべきか、取らないべきか。
真実の彼は一体どれ?

「悩んでいるみたいだな」

「悩みがないあなたにはわからないわ」

「なんだ、私達の仲が羨ましいのか」

「変な事言わないで」

「あの男はそれ程器用じゃないよ」

「何の話よ」

「学校のお前がどうだったか知らんが、騙している相手に嘘ばかりだったわけでもないだろう」

「そうだけど」

「単純な話だ。どちらでも構わない。ゼロでもルルーシュでもお前が今言われて思い浮かべた奴がお前の中の真実のアイツだ」


そう言われて、少女が思い浮かべたのは――


「で、いつ迎えに行くの?」

「ほう。もう選択を決めたのか」

「冗談じゃない。記憶だけで判断できないわ。あたしはただ文句や苦情は本人を前にして言いたいだけ。取り合えず選ぶのはその後よ」

「そうか。決行日はもう決まっている。――あぁ、カレンついたぞ」

ようやく開けた森の外へ。
暗い暗い黄泉の国から、明るい現世に舞い戻ったようだ。
今が一体何時なのかがカレンはよく分からなくなった。
森の中が暗すぎただけで、明るいと感じるのはもしかしたら勘違いなのかもしれない。

ふと振り返った森の中、人間は悲しいぐらいに多すぎて、この小さな世界の中では自分が生きようと動くだけで誰か別の命を押し潰てしまうだろうとカレンは思った。

それでも人は前を向いて進むのを止めない生き物なんだ。
自分が生きる、ただそれだけの為に。

鶏の声が聞こえた。
その前にあたしが犯した罪を思う。

たとえ裏切られていても、あたしは裏切っちゃいけなかったんだ。
心の中でそう口にする。きっと彼に会う前から選択はもう決まっているのだろう。

いやだ。そんなに親しくしていた覚えなんか全然ないのに、
なぜかカレンは彼女に言わた瞬間、すぐに彼の顔を思い浮かべられた。

からかわれたり、
皮肉気だったり、
逆にいじられたり、

カレンの中には偽者で浮かべられるとは思えない感情を持った少年の姿がいっぱいいた。

あたしと同じ感情を持った人間なら信じられるかもしれない。

少女の宗教が、果たして魔王であり救世主である彼に添えるのか、
その答えは、この朝が夕べになる前に魔女によって告げられた。

「朝と夕べの物語」(3、或る信仰のない騎士たちの話)

愛とは何でしょう。
愛とは何でしょう。
子羊は空を見上げながら思いました。
愛とは犠牲なのです。


箱の中には少年と少女がいた。
四角い部屋に四角いテーブル。
四角いケータイ電話。

少女は彼女の愛用の箱を手に取る。

「なんだか嬉しそう」

愛用の箱――ケータイ電話に指を走らせながら、周りでやたらご機嫌にしている同僚に声をかけた。

「そうなんだよ、聞いてくれアーニャ!ラウンズに新しいメンバーが入るんだってさ!しかも私達と同じぐらいの若い奴だって!!」

「そう」

「あぁ!」

「で、何が嬉しいの?」

「って、おいーっ!お前なぁ、そりゃ同年代ってのが嬉しいだろう。しかも男らしいし、もしかしたら私達の生涯の大親友とかになるかもしれないぞ」

よくわからない。そう思う私は何かが欠けているのだろうか。少女は考える。

「アーニャは嬉しくないのか?」

「興味ないわ」

いつの間にか、少年が少女の隣りに腰掛けていた。と言っても座っているのはテーブルの方にだ。また年長のラウンズたちに注意を受けるだろうにまったく彼は懲りない。

「ふーん。でもこっちは興味あるんだな」

つんつん、とケータイ電話をつっつく。画面には今日アップロードした写真と記事が写っている。

「興味あるから撮っているんだろう?」

「わからないわ。興味がないから撮っているのかも」

「うん?」

彼はイマイチ良く分からないと言った顔をして首を傾げた。

少女は思う。
自分は世界のあらゆる現象に興味がないからこそ、こんな風に情報を集めているのかもしれない。
つまりこの世界の大多数の人間と同じだと思われるように興味があるフリをしていたいだけなのだ、と。

「楽しくないのか?」

「わからない」

「ねぇジノ、ラウンズとしての任務は楽しい?けど楽しくても楽しくなくても、私達はそれをやらないといけない。任務だから。それと同じでしょう?」

所詮、私達は彷徨う子羊たち。
他の人たちは知らないけど、彼と私は少なくとも同じように、国家や皇帝陛下や皇族たちに忠誠を心底捧げている訳ではない。
主義や主張や目的なんてない。もちろん楽しくもなければそれほど苦痛でもない。

なんとなくで、私達は磨耗されて行く。国家の為の剣となる。
でもそれに逆らおうとする程の理由は、私にはない。

ブログを更新し続けるのも同じ。始めた以上、止める理由が無いから。


――私の世界は停滞している。そう気付いたのはいつからだったろう。


「ラウンズの任務結構楽しいけどなぁ」

と、ぼやく彼。あらゆる物事に楽しみを見出せる彼が羨ましい。

「アーニャと喋ったりさぁ、ラウンズのおっさんとか、おばさ……じゃなくてお姉さま方とかとわいわい……ん、どうしたアーニャ、難しい顔をして?」

「荒らし」

「ありゃりゃ。死ねとかブスとか馬鹿とかクズとか語彙が貧相なコメントだ。おまけにアーニャはこんなにも可愛いのに、でもさぁ」

考え込む少女に、少年はつーと顔を覗き込んできてずらっ子のような笑顔で聞いた。

「これって更新止める理由にならない?」

「……」

さぁって、アーニャさんどうするでしょう~?

その軽い言動を無視して、昨日今日書き込まれた他のコメントを見る。
記事に対するコメントに加えて、荒らしに対する文句や気遣いが書き込まれていた。

「こんな事で止める理由にはならないじゃない」

的外れな誹謗中傷なんて、毛筋も痛くない。
だと言うのに「それってやっぱ好きって事なんじゃん」と嬉しそうに言うこの男の勝手な思い込みっぷりがムカツク。

「アーニャはさぁ。自分が気付かないだけで、楽しいとか好きとか思っていることいっぱいあるって、例えば私とか?」

「嫌い」

「って即答かよ!?そりゃないって付き合い長い仲間だろぉ?」

四角い画面。
四角い記事。
切り取られた情報たち。

あんまりにちっぽけだ。
私の集めた情報なんて荒らしにきた相手が書き込んだ通り、確かに何の有益にもならないクズばかりなのだろう。

でも止める事はしなかった。

少女が彼を見ると、

蛍光灯の明かりに反射して金色の髪がきらきらして見えた。
綺麗だなと思った。

「……でも、被写体としての貴方なら嫌いじゃないわ」

ぽつり。こぼれた、たぶん本音。一瞬、息を呑む音が聞こえた。

「だろ?私はかっこいいもんな!」

「馬鹿っぽくて面白い記事になるもの」

「ひどい!」

四角い箱の中、
四角いテーブルに腰掛けた少年が、
四角いイスに座った少女に、


新しい仲間の話をしていた。


これから来る仲間は、生贄の子羊なのだろうか。
それとも誰が為に捧げられた信仰と剣が、そこにはあるのだろうか。

もしもそこに信仰があるなら、この停滞した私に新しい世界を見せてくれないだろうか。
代わり映えのない世界が変わる予感がした。

これは神様を殺そうとする王に捧げられた、信仰のない騎士たちによる黄昏れ<ラグナロク>前のちっぽけなお話。

「朝と夕べの物語」(4、或る偽りの夢見る者たちの話)

リリス。
彼女はアダムの最初の妻。
しかし彼を拒否して逃げ出して、けして彼のもとには帰ってこなかった。
自分を支配しようとする夫を彼女は善しとはしなかった。


朱と蒼が混ざり合っている。
誰が彼か、分からぬ誰彼れ(たそがれ)の時刻。

庭園には少女がいた。


その中へ少年が入ってゆく。


そうするとここはもう庭園ではなく、毎夕繰り返される舞台だった。

さぁ、始めよう。
少年は少女に近づいてそっと声をかけた。

「ナナリー」

優しさも、厳しさも、切なさも、愛しさも、憎しみも、タイムカプセルみたいに密封されて、みんなみんなここ(彼女)の中にあった。
少年は壊してしまいたい衝動と、自分だけのものにして大事に大事に抱え込みたいジレンマをなんとか押さえ込んだ。

ノアの箱舟だ。
少年の世界は洪水に流されて何もなくなってしまったはずなのに、その世界を支配している神様が温情を出してとある人間と、あらゆる動物を一匹づつ舟に乗せてしまった。
そんなことをしてしまったから、僕と言う世界はまだ続いてしまっている。

小鳥のさえずりのように謳う夢物語。
幻想世界に誘う子守唄。

彼女の甘い声が僕を、彼を眠らせてゆく。

ユフィ姉様。
お兄様。

聞きたくない言葉が紡がれる度に、僕の心は嫌悪と悲しみと愛しさを増してゆく。

大切だった人たちの僕の知らなかった物語。
なんて馬鹿馬鹿しい!
2人のことを自慢げに嬉しそうに語る何も知らない、ちっぽけなこの少女が滑稽でたまらない。

君の大好きなお兄様は君の大好きなユフィ姉様に、日本人を殺させた上げくにその罪を押し付けて殺したんだよ?
僕の最初で、たぶん最後だった友達は、僕の最初で、たぶん最後だった共にいたいと思った女性を殺したんだよ?

真実を聞いて、この少女はこんな風に笑っていられるのか。
二人のことを大好きだと僕の前で言っていられるのか。



――嗚呼、けれども真実に馬鹿馬鹿しくて、滑稽なのは僕の方だ。



知ってしまってから僕が信じ続けていられなかった楽園を、今の僕は彼女に押し付けているだけなんだ。

そこに僕を好きだと言ってくれたユフィがいて、幼い僕に絶望と新しい世界を見せてくれたあの兄妹がいて、たくさんのものを諦めてしまったけど、もう二度と出会うことのなく失くしたと思っていたものが戻ってきて、一生手に入らないと思っていたものも側に居て欲しいと言ってくれて、こんな日々が続くのは幸せになってはいけない僕の許される範囲のささやかな幸福だと思っていた。

でも禁断の果実を口に含んで、僕はその楽園が贋物だと知ってしまった。

僕は後悔しているのか。いや、そんなことはない。
知ってしまって、僕だけがゼロを殺すことができると確信している。

だって僕はゼロが生まれた瞬間をこの目で見たんだ。
そして僕はゼロが世に誕生するのを止められたはずなんだ。

今も鮮明に蘇る、この記憶。

ちっぽけな彼は、
ちっぽけなこの僕に、

「ブリタニアをぶっ壊してやる」

と、宣言をした。あの時だ。
あの時僕が父を殺してしまった事を告白していたら、あの苦しみと絶望を伝えきれていたら、ゼロがいない未来がありえたのではないか。



これは後悔じゃない。


ナナリー、僕は君にいつまで嘘をついていられるのだろう。
君が楽園の中で笑うたびに、僕は今だ自分がその中にいるような錯覚に陥るんだ。

――でもこの後ろ手に持った禁断の果実を、僕が差し出してしまう日がすぐ明日にも存在するかもしれない。

もしかしたら強い君は、僕がそんな事をしなくても自分からこの偽りの楽園を出て行くのかもしれない。
だったらそれまでは、僕と一緒にまどろんでいてくれ。


楼閣にあるこの愚かで幸せな楽園の夢を、僕に見せて欲しい。


穢れない頃の彼女と彼のいる世界へ。


「もうこんな時間だよ、ナナリー。部屋に戻ろう」

「はい。忙しいのにつき合わせてごめんなさい」

「いや、いいんだ」

だってつき合わせているのは、この僕の方だ。
部屋の扉を閉める前に、彼女は見えない目をこちらに向けて、

「おやすみなさいスザクさん」

と鈴を転がすような声で囁いた。
彼女もまた現実の世界の存在でなく、僕が見ている夢なのかもしれない。
扉に手をかけながら、そんな馬鹿なことを考えてしまった。

夢なら夢でいい、所詮この扉が閉じればもう終わってしまうんだ。
僕は扉が完全に閉じる寸前に、夢(彼女)に向かってこう返した。

「おやすみなさい、ナナリー」

(そしておはよう、枢木スザク。ラウンズのナンバー7それが僕が心から望み、僕が手に入れた今の僕なのだから)

そして悪夢はまだ続く。
スポンサーサイト
Secret

プロフィール

hawa

Author:hawa
二次元小説は男女(女男)CPかnotCPの健全ものです。
無断転載禁止。版権元、原作者とは一切関係がありません。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

FC2カウンター

QRコード

QRコード

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

リンク

RSSフィード

ブログ内検索

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。