コードギアスSS「人はそれ故にこんなにも」(ルルシールル)

※ルルがYシャツ一枚でベッドに寝転がるC.C.(美少女)を前にして何もしなかった「お前男じゃねーよ!!」的行動と恋愛感情に対する逃げっぷりをシリアスという名のオブラートで包んで弁護してあげた話。まぁつまり一行で簡素に言うとルルーシュが童貞な言い訳。2007年6月ごろに書いたやつ。この頃の私は、恥ずかしい話を書いているな。








 とおっ!などと掛け声をかけて、人の肩に重くて柔らかいものが置かれた。
横を向くと白くて柔らかくてすんなりしたものがにゅっと伸びてきて、雑誌に意識を集中させるのを妨げる。


手でペチペチと攻撃してそいつをどかそうとするが、器用に応戦してきた。
足で。そう足で。


C.C.が惜しみなくルルーシュの前にさらした素足は勇猛果敢に攻撃を繰り出す。

やー、2段攻撃!
とー、ジャブ……ジャブ……!
それ、アッパー!!

一体、どういう関節をしているんだ!?と問い詰めたくなるような足技に、ルルーシュは危うく足で頬を叩かれるところを逃れてから文句を言った。


「鬱陶しいぞ。なんなんだお前。大人しくこの足をどけてピザでも食って寝ていろ」
「気に入らない」


随分とぶすっとした剣呑な声が返ってきたものだから、流石のルルーシュもこれは軽くあしらうぐらいで解決する問題じゃないなと覚悟をきめる。
この女の我侭に本当は一秒だって付き合いたくはないのだが。


「何が気に入らないんだ?」
「お前だ。お前」
「俺か。残念だか俺は取替えがきかないんだ。性格の不一致で同居人として不適格とでも言うのならどこへとも出て行ってくれ。共犯者だからと言って何も四六時中一緒にいる謂われはない。用があるときだけ会えばいいんだからな。連絡手段が必要なら餞別に携帯電話でも俺が贈ろうか?」

「よくもまぁそこまで一息に口が回るものだな。だが、その発言は的外れだぞルルーシュ」
「それならお前の言いたいことを簡素にまとめてくれ。きちんと主語を入れてできれば1行ぐらいで」
「わたしを抱かないお前が気に入らない」


……絶句。


言葉のでないまま固まってしまったルルーシュの後ろで(言わなかったがそこはベッドの上で、ルルーシュはベッドにもたれて雑誌を読んでいたのだが)C.C.は平然とした声色で続けて言った。


「はじめて会った時の話だ。今のわたしのようにお前のYシャツ一枚を着て、お前の――むろん今はわたしのベッドだが――ベッドに寝転がって、お前を迎え入れた年若い娘を前にして、同じく同年代に見える思春期真っ盛りなはずの17歳のお前は何をした?何もしなかった。それから今日までを顧みてこれは紳士的とかそう言う問題ではなくお前の男としての機能を疑わざる得ないという結論にまで達した。どうだ?お前に弁解の余地はあるか?」

「お前を女としてみてないからだ」

ようやく無言の世界から脱したルルーシュは再び雑誌に目を落として、嫌にキッパリとそう言った。

「弁解の余地はないようだな」
「おいっ!」

今の返事を聞いてなかったのか!?と言った目で睨むと、今日はじめて見たC.C.の表情が妙に悲しそうに見えたから口を閉ざす。


本音を言うとルルーシュは人の悲しむ姿はなるべくなら見たくはなかった。
何もしないせいで、何かをするせいで、してもしなくてもルルーシュの周りにはいつもの如く親しい人の悲しげな顔を生み出してしまう。
だからその悲しみを請け負うことだけがルルーシュの出来る精一杯の誠意だと思っていたのだ。


弁解の余地などないと。
自分には言い訳をする資格などないとそう思っていたのに。


俺は彼女に1度甘えてしまっているから。
はぐらかすわけにはいかないか。


ルルーシュは少しだけ。少しだけ本当のことを話そうと思った。
いや、これだって自分がそう思い込んでいるだけで本当のことではないのかもしれない。人の心ほど移ろい易く掬いがたいものはないのだから。



雑誌を閉じて静かに零す。


「俺は怖いのかもしれない」と。


ゆっくりルルーシュの首と目元に回された体温は共犯者の腕で。
いい加減足を下ろしてくれ、とこのタイミングで言ったらこのまま首を締められかねないような感情のこもらないシビアな腕だった。


彼女の体温はまるでもう一人の自分のようにごく自然にそこに存在していた。たとえば無色透明な空気。
昔はそうではなかったのに。ふわふわとした柔らかな温もりが好きだった。あふれる誰かの笑顔が好きだった。惜しみなく振りまかれる慈愛と優しさが好きだった。
……でも今の自分には、どこまで行っても甘くないこの手が好きだと思う。


「もしも俺が他の誰かを大切に思って愛したとしたら、ナナリーのことが絶対的に第一ではなくなってしまうだろう。そうなったらナナリーもその相手も不幸にしかならない。俺には2人の人間を幸せにできるような器用さは持ち合わせていないんだ。大切なものはそう何個も抱えていても得策とはいえない。俺はひとつだけでいいんだ」

「人肌も同じだ。1度触れたらきっと際限なく甘えて溺れてしまいそうな自分がいるかと思うと。自分が許せなくなる。逃げるなんて俺に許されるはずがないのに。誰かに縋ろうだなんてお門ちがいも甚だしいのに!」


自嘲の声で震える言葉は首に回されていた手によって塞がれた。


「お前は自分が愛される権利はないとそう言うのか?」


答えようにも答えられないようにされたのは、彼女が答えを知っていたからか聞きたくなかったからか。


――ああ。


言葉にならない返事は喉の奥で消えた。






暫くすると腕は外された。
その時部屋を流れたカラリとした会話はいつものふざけあった2人だった。


「それにここにはナナリーがいるだろう。ナナリーが過ごしている場所でそんな不届きな真似ができるか」
「はん!このシスコン男め」
「うるさい!」


それはルルーシュにとって心地いい空気だ。


今だルルーシュの肩に乗せられ続ける足は、この場所に自分を繋ぎとめようとするかのような不器用なC.C.の気配りにも感じられてこれは感謝するべきかとふと思い至る。
いい加減肩こりになりそうだという恨みも込めて、ルルーシュは不敵な笑みでC.C.を一瞥してから、その顔がキョトンとしていたことに更に笑いをこらえて、すぐ側の太ももに更に近づき――


「うわっ!」


滅多なことでは動じない女のやけに可愛げのある悲鳴に、ルルーシュは笑いを堪えるのは諦めて盛大に声を立てて笑ってやった。
驚いたせいでバランスを崩し、ベッドから落ちてしりもちをつくC.C.を支えるでもなく逃れたルルーシュに、恨みのこもった視線を向けるが無視。



「責任をとれ」
「俺はこれから出かける」
「じゃあ、わたしも出かける」
「お前は俺がどこに出かけると思ってるんだ?」
「ホテルだ!ホテル!責任を取れ!!」
「俺は何もしてないだろうが」



「十分した!」




学校の用事で出かけるらしいルルーシュの後姿を最後まで仏頂面と文句で見送ったC.C.は、そっと自身の太ももに手をやった。
ほんのりと赤く色づいた痕があるその足を見て、そしてやつが押し付けた唇の感触を思い出しながら、「童貞坊やの分際で随分なことをやるじゃないか」と空っぽの部屋で呟く。


わたしにあんな笑みを見せて、あんなことをするとは、絶対に責任を取らせてやるから覚悟しておけ!


残された部屋にはあのときのルルーシュに、負けず劣らずの不敵な笑みを浮かべたC.C.の姿があった。


―完―


谷川俊太郎の詩に「からだの中に」という作品があります。これが今回のタイトルの元になったのですが、初めて見たときわたしはラストの言葉の使い方のあまりの上手さに目から鱗でした。大好きです。
以下、反転するとその詩の一部が転載されています。
からだの中に
ああからだの中に
私をあなたにむすぶ血と肉があり

人はそれ故にこんなにも
ひとりひとりだ
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