遊戯王ZEXALSS「甘やかしたい」(カイト+遊馬)

※「甘えられない遊馬とか可愛い!」と「カイト甘やかしたい!」が合体して出来た話。ほのぼの家族愛話かな。ちょこっとハルト。長編の息抜きSSその②頑張れ自分。





カイトが遊馬を見かけたのは、夜の10時を過ぎた頃だった。
大通りから逸れたパノラマは、車の数も少なく、人通りも少ない。
随分と物騒だ。

中学生が居て良い時間でも場所でもなかった。

「こんなところで何をしているんだ」

「あれっ。カイトじゃん」

声をかけると、赤いポストにもたれ掛っていた遊馬が顔を上げた。
夜のせいかその声は、昼間に聞くよりも覇気がないように聞こえた。

「いや。別に、なんでもない」

とカイトに答えると、また俯いてしまう。
なんなんだ。

立ち去るべきか、もう少し突っ込んで理由を聞くべきか、カイトが悩んでいると、


ぐぅうう~。


何だか間抜けな音が近くから聞こえてきた。
遊馬は情けない顔でお腹を押さえて「腹、減った~」とその場に崩れ落ちた。






「カイトって本当に料理作れるんだな」

食事を食べてすっかり元気になった遊馬が、空っぽの皿の上にレンゲを置いてソファに大の字になった。
腹を空かせた遊馬を、仕方なく保護したカイトは家に連れ帰って、余り物の材料でチャーハンをご馳走してあげていた。

「食べたら、とっとと帰れ。家族が心配しているだろう」

折角、長年離れていた両親と再会したのだ。
さぞや恋しかろうと思って言ってやったのに、遊馬はその言葉を聞いた途端黙り込んでしまった。

カイトは驚いてしまう。
遊馬がどれだけ両親のことが好きで、いつも会いたいと願っていたか。
それ程頻繁な付き合いではないカイトだって良く知っている。
だから家族の話題を出して、こんな顔をするとは思っても見なかった。

夜の町を出歩いていた遊馬。そしてこの反応。

「家族と喧嘩でもしたのか?」

「違う!」

立ち上がってまで、遊馬は強く否定した。
どうやら喧嘩ではないらしい。
なら、何故だ。

気まずそうに目を伏せる遊馬は、こんなことをカイトに聞いてきた。

「カイトは、Dr.フェイカーと仲直りした後、どうだった?」

「どうとは……」

「だってカイトは、自分の父親のことずっと嫌いだっただろう。すぐに仲良く出来たのかなーって」

それは『デュエルをやればみんな仲間だ!』と公言している人間が言うとは思えないような、繊細な問題に関わる質問だった。

「そんなにすぐに仲良くは出来る訳がないだろう。俺たちはあまりに長い間『家族』であることを止めていた。だが、ハルトがいた。父さんはハルトの為に、バリアンに魂を売り、その気持ちは俺と同じだった。だからハルトを中心にして、少しずつまた家族になることが出来た。ハルトのおかげだ」

それとお前のおかげでもある――。という言葉は、カイトは呑み込んだ。

「そっか」

遊馬の目は揺れていた。やはり『家族』に思うところがあるらしい。

「俺、ずっと父ちゃんと母ちゃんがいなくてさ。ずっと会いたいって思ってて、その……」

ちらりっと、カイトの顔色を窺った遊馬の顔は何故か赤かった。
カイトは不思議に思ったが、無言で続きを促す。

「笑うなよ」

「あぁ」

「そのな。――実際に本人に会ったらなんか恥ずかしくなって、どう甘えて良いか分からないんだよぉ~!」

「……」

言ってしまった! と言わんばかりに顔を両手で覆った遊馬は、足をバタバタさせて羞恥心に身悶えている。
逆にカイトにしてみれば、もっと深刻な問題かと思えばなんてことはない、大人が聞いていれば微笑ましくさえある悩みに、すっかり毒気を抜かれてしまった。

「だって、フツーの中学生ぐらいの子供って、親にどんな感じの態度なんだよ。全然分かんないし、甘えて良いって言われても何すれば良いかわかんないし。特に母ちゃんなんて父ちゃんよりも一緒に過ごした記憶ないから、なんか緊張しちゃって今日も全然喋れなかったぁあ!!」

「少し、落ち着け」

「でもさぁ、二人ともしばらくしたら冒険の旅に出ちゃうから、今のうちにどうにかしないと!」

「だからって気まずくて家を飛び出していては本末転倒だろう」

遊馬が夜の町を彷徨っていた理由がようやく分かり、カイトは呆れた。

「そーだよな~」

今更後悔したらしい遊馬が、今度は頭を抱えだした。

「騒がしい奴だな。俺は今更、甘えるなんて出来なかったが、お前は違うだろう。足りない頭で考えずに思ったままに行動しろ。無理に甘えなくても、やって欲しいことの一つや二つぐらいあるだろう。まずはそれから始めれば良い。両親だって喜ぶんじゃないか」

カイトにしてみれば、家に叩き返すために言った言葉だった。特に深く考えて言ったわけではない。
ところがそれを聞いた遊馬は、何故かソファの上で正座になり、神妙な顔でカイトを見てきた。

「カイト。本当は甘えたかったのに、甘えられなかったんだ……」

同情心に満ち満ちた顔だった。まさかそこに食いつくとは思いもしなかった。カイトしてみれば余計なお世話である。
確かにもっと小さい頃に和解出来ていたら、子供らしく父親に甘えられたかもしれない。
だが今のカイトにとって、家族は甘える場所ではない。守るべき場所だ。その事に何の不満もなかった。

「お前に憐れまれる筋合いはない」

「うんうん。分かった」

遊馬は一人で何かに納得すると、ばっとカイトに向けて両手を広げた。

「父親に甘えられないなら、俺に甘えて良いから!」

眩しいほどの笑顔だった。その溢れ出る寛容さは、地球を丸ごと優しく抱きしめてくれそうな程である。

「……」

馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、やっぱり遊馬は馬鹿だったようだ。
カイトは自分が五歳年下の子供に甘やかされようとしている事案に、頭を痛めた。

「どうして……そうなるんだ」

「子供って、子供であることを十分に満喫しないとちゃんとした大人になれないって、婆ちゃんが言ってた。カイトはすげー奴だけど、まだ大人じゃないだろう? 誰かに甘やかしてもらわなくちゃだめだって。だから、ほら!」

言ってる事は分からなくはないが、それで『はい。そうですか』と言ってカイトが遊馬に甘えるような関係性が、二人の間では成り立っていなかった。
カイトは仕方なく、腕を広げて持ちやすくなった遊馬の脇に手を差し込み、そのまま持ち上げて強制的に地面に降ろすことにした。

「うわっ!」

「誰かを甘やかすには十年早い。お前はまずは甘えていろ」

不満顔の遊馬を部屋から追い立てる。
こいつは家族に囲まれて甘やかされてる方がお似合いだ。
などとカイトは思った。


玄関から出る時、遊馬はカイトに言った。

「カイト、今日はサンキュー。俺、母ちゃんに作って貰いたい料理があったし、父ちゃんともデュエルがしたかったんだ。なのに色々考え過ぎて忘れちまってた。あと俺、絶対にカイトのこと甘やかしてやるからな!」

「そのことは忘れろ」

びしっと人差し指をカイトに突きつけて、遊馬はそんなことを宣言して帰って行った。





それから数日後。


「兄さんまだ起きてたんだ」

研究室にやって来たハルトが、瞼をこすりながらカイトの元を訪れた。

「起きていたのか」

「ううん。寝てた。トイレに行っただけだよ。兄さんももう寝たら?」

「一区切り付いたらな」

「うん。――そうだ。兄さん。ちょっとしゃがんで」

「なんだ」

「良いから」


カイトが素直にしゃがみ込むと、ハルトの目線と同じぐらいの高さとなった。
それに満足げに微笑んだハルトは、カイトに手を伸ばした。

「いつもお疲れ様。だから今だけは兄さんも甘えて良いからね」

ぎゅっと首筋に抱きつく小さなやわらかい手。

その言葉に、カイトは数日前の遊馬の『宣言』を思い出していた。


――俺、絶対にカイトのこと甘やかしてやるから!


今日の昼間、遊馬がⅢに会いにここへ遊びに来ていたことを思いだし、納得した。
これは遊馬の入れ知恵に違いなかった。

やられたな。

カイトは『宣言通りだったろ?』と、自慢げに胸を張る遊馬の顔を思い浮かべながら、愛おしい弟を抱きしめ返した。
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